今回は”EQ(イコライジング)”について解説します。
EQを的確に行うには、”周波数“と”倍音“は是非とも知っておいてほしい基礎知識ですので、これらの記事も合わせて確認してみてください。
特に周波数に慣れることは重要で、そのための訓練として、シグナル・ジェネレーター等の発信機から出した正弦波が何Hzなのか、大体言い当てられるようにするのも有効です。
概要
・EQを行うために、音源の「必要な部分」と「不要な部分」を探るテクニックを学ぶ
・EQの基本姿勢はあくまで”補正”であることを理解する
シグナル・ジェネレーターで周波数を感じる
まずは、動画を再生して、音例を聴いてみてください。
広い周波数帯が鳴るので、ヘッドフォンや低音までしっかり出るスピーカーで聴いてください。
※再生レベルにはご注意下さい
これはシグナル・ジェネレーターで110Hz~7040Hzまでを7段階に分けて再生したもので、最初に出てくる110HzはMIDI鍵盤で言うところのA2。
そこから数値を倍々に、音程的には1オクターブずつ上がっていくように作ってあります。
ちなみに、ピアノ鍵盤上での最高音のAは3,520Hz(A7)で、音源の最後に出てくる7,040Hzはピアノの実音上では出せない音です。
以前紹介した基音対応表も見ながら、Aの音程が1オクターブずつ上がっていくのに数字は倍数になっている所にも注目しましょう。
動画で鳴らした周波数
① 110Hz (A2)
② 220Hz (A3)
③ 440Hz (A4)
④ 880Hz (A5)
⑤ 1,760Hz (A6)
⑥ 3,520Hz (A7)
⑦ 7,040Hz (※)
(※ピアノの実音上にはない音程)
ピアノの音で周波数をスウィープさせる
では、実際にピアノの音で周波数をスウィープさせてみましょう。
周波数をスウィープさせていくと、この楽器の「良いところ」と「悪いところ」が時折見えてくる感じがしませんか?
大幅にブーストアップしているので判断が難しいかもしれませんが、それを踏まえて、もう一度聴いてみて下さい。
[音源のチェック手順]
- EQのGainは10dB~15dBぐらい、思い切りブーストする
(音源が歪んでしまう場合は、Inputレベルを下げて対処する) - Q幅は極端に狭めたり、広げ過ぎたりしないように調整すること
- スウィープさせて感じた
「良いところ」 → 「欲しいところ」→ ブースト (Gainをプラス方向(±0dB)よりも上げる)
「悪いところ」 → 「いらないところ」→ カット (Gainをマイナス方向(±0dB)よりも下げる)
この、EQで周波数をスウィープさせて音源をチェックする方法は、ミキシングエンジニアが音源の「必要な部分」と「不要な部分」を探るための基本テクニックです。
実際にはこのように1番下から1番上までをスウィープさせるのではなく、『この辺り』と目星を付けた周波数帯をスウィープさせてポイントを探るのですが、基本的に「必要な部分」も「不要な部分」も
ブーストさせた状態でスウィープさせて判断します。
EQで音源の不要なポイントを探す
では、この A.Pf音源の「いらないポイント」を探してみましょう。
[EQで不要なポイントをカットする手順]
- EQを立ち上げ、ノーマルのQ(幅)、Gainを10dB~15dBぐらい思い切りブーストする
- ブースト状態で左右にスウィープさせ、いらないと思われるポイントを探す
- ポイントが大体定まったところでQ(幅)を狭める
- Q幅が決まったら、-10dB程度カット
- 周波数スライダーを動かして微調整
- Gainを上げ下げして、そのポイントが正しいかチェック
- カットした状態で、EQをOn/Offしてチェック
- カットする量を決定する
※動画では簡潔に説明するためにかなり急いでいますが、実際はもっと慎重に時間をかけてポイントを探します。
今回の動画でカットした2ポイントは音がキンキンしてコードトーンの邪魔に聴こえてしまった部分ですが、この”気になるポイント”というのは人それぞれ違うので、「これが正解」というものはないと
私は思っています。
まとめ
ここまで、イコライジングの基礎となる部分を解説してきましたが、イコライザーの基本姿勢は、あくまで “補正“ であると心得て下さい。
イコライジングには経験と慣れが必要ですが、まずは楽器の「良いところ」「悪いところ」を的確に探し出せるよう、手持ちのEQで遊んでみて下さい。
自分なりの耳が鍛えられていくはずです。
音源出典:Big Fish>Jazz>115 NuJazz Piano 02_G