今回は最適な録音レベルでレコーディングする方法を解説します。
録音レベルの解説についてはこちらの記事を参照してください。

 

概要

・ゲインとフェーダーの役割の違いを理解する
・レコーディングする音の流れを理解し、楽曲に最適なレベルでレコーディングする

 

ゲインとフェーダーの違い

以前、サウンド&レコーディングマガジン紙のQ&Aコーナーで
「ゲインとフェーダー、どちらもレベルが上がるが、どのように違うのか?」という質問に答えた事がありました。

ごく一般的なミキサー卓で言うと、

ゲイン ツマミ
→ ミキサーの入り口で、音源の入力レベルを調整する所

フェーダー
→ ゲインで得たレベルをどのぐらいの音量でアウトプットするかを設定する所

つまり…

ゲイン
→ インプットのレベルを調整するもの

フェーダー
→ アウトプットのレベルを調整するもの

と考えてください。

この違いを理解した上で、ゲインとフェーダーを使った最適なレベルでレコーディングする方法を学びましょう。

補足:フェーダーの種類
フェーダーには回転式の“ロータリーフェーダー”とスライド式の“リニアフェーダー”があります。 
今回の説明でのゲインツマミは回転式のロータリーフェーダー型ですが、この入力ゲインツマミはレコーディングの現場では"フェーダー"と呼びません。
基本的には"リニア式のボリュームコントローラー"と覚えて下さい。

 

ミキサーの音の流れとゲインの設定方法

まず、レコーディングする音の流れとして、簡易なミキサーを思い浮かべてください。
ミキサーの音の流れは図1を参照しながら、以下の手順でゲインを設定しましょう。

ゲインとフェーダー①ミキサーにケーブルを接続する
マイクやライン音源などのケーブルをミキサーにつなぎ録音レベルを決める場合、1番始めに音が通るところはゲインになります。

②アウトプットレベル側のフェーダーを0dBにする
アウトプットレベルの調整をするフェーダー位置は0dBにしておくのが基本です。
(あくまで録音時の場合)

③ゲインを使って最適な録音レベルに調整する
フェーダーを0dBに固定した状態で最適な録音レベルとなるように調整しなければならないのが”ゲイン”です。

 

ゲインとフェーダーを使った最適な録音レベルの設定例

次はフェーダーも操作して、最適な録音レベルを設定していきましょう。

以下の図2では、同じ音源で出力したレコーダー側のレベルが3例ともちょうど良く振れている状態を前提とします。

図2 [ゲインとフェーダーの設定例]
ゲインとフェーダー設定例

[2-1] … NG
ゲインが絞り切りでレベルが小さかった為にフェーダーでレベルを稼いだ状態。
これでちょうど良いレベルで録音できたとしても、機材によってはフェーダーノイズ(注1)が増える可能性があります。
また、ゲインの本体である”オペアンプ”の性能を最大限に使うことができず、良い状態とは言えません。

[2-2] … OK
フェーダー位置が0dBの所にあり、ゲインでレベル合わせを行った状態。
ゲイン、フェーダーの性能をベストの状態で使えている理想的な形です。

[2-3] … NG
ゲインでレベルを上げ過ぎてしまい、フェーダーを下げてレベル調整を行った状態。
これではゲインの所で歪んでしまう危険性やノイズが大きくなる可能性があるため、良い状態と言えません。

(注1):フェーダーのノイズ
ゲインやフェーダーなどに使われるオペアンプは、レベルを上げるほど「サー」というノイズが増えます。
このノイズが音源に混ざって出力されるため、正しいゲイン、フェーダーの使い方が求められる訳です。

 

まとめ

このように、ゲイン・フェーダーそれぞれのオペアンプの性能を最大限に活かし、ひとつひとつの音源をベストの状態でレコーディングすることが楽曲の仕上がりに直結しているということを理解しておきましょう。