今回は録音レベルの決め方と重要性について解説します。

アナログ・デジタルどちらにおいても、録音(入力)レベルは音質に影響する重要なものです。
楽曲に最適なレベルでレコーディングできるノウハウを学びましょう。

 

概要

・録音レベルによる音源(音質)の変化を理解する
・音源の最終的な仕上がりを最大限良くするためには、レベルが重要であることを理解する

 

レベルによる音質変化

例として、カセットレコーダー等のアナログテープに録音した場合を想像してみてください。

小さな音で録音した音を聴くためにボリュームを上げていくと、「サー…」というテープヒスノイズと呼ばれる音が一緒に大きくなる、という経験をした方もいるかと思います。
これではお気に入りのサウンドにノイズ(雑音)を大きく付加した状態になってしまい、本来のサウンドを台無しにしてしまっていると言えるでしょう。

デジタル録音の世界でもノイズこそ出ませんが、録音レベルを小さくしてしまうと”力の無い音”になってしまいます。
そのため、ミックスの時には大きいレベルで録音した音よりも”抜けの悪い音”になってしまいます。

 

レベルとビット深度

まず、”レベルとビット深度”を理解していきましょう。

例えば、CDはサンプリング周波数=44.1kHz、ビット深度=16bitです。
サンプリング周波数は時間軸の分解能。ビット深度は音の大きさの分解能になります。

サンプリング周波数とビット深度

最近のDAWでは、サンプリング周波数=192kHz、ビット深度=32bitの分解能を持ったものが出ていますが、そのメリットを活かしてレコーディングしないと意味がありません。


分解能の値によらず、デジタルでもクリップする直前ギリギリまでレベルを入れて録音する事が、その音源を活かすための最低条件となることを理解しましょう。

波形のビット深度(縦軸)が大きくなるように録音レベルを決める時は、レベルメーターを見てオーバーロード(一番上の赤い部分)ギリギリを目指すと良いでしょう。

※サンプリング周波数とビット深度については、
 下記サイトがわかりやすく解説しているので、参考にしてください。
 http://www.narui.com/atsuki/VisualAudio/pcm1.html

 

打ち込み音源のパラメーター設定値によるアウトプットレベルの違い

今回は、VOCALOID3 EDITORを使ってコントロールパラメーターの設定値がファイル書き出し時のアウトプットレベルにどう影響するのか検証していきましょう。

新規にファイルを作成した場合
V3_DYN初期値64

DYN(ダイナミクス)の値はデフォルトで64に設定されています。
DYNは”ボーカロイドの声の大きさ”に相当し、いわばDAWの入り口(入力レベル)とも言えます。
また、実際のボーカリストでは”声の大きさ”と言い換える事もできます。
デフォルト値 DYN=64でオーディオファイルに書き出してしまうと、波形がとても小さくなり、ミックス時に声も抜けてこなくなってしまいます。

DYN=100に設定した場合
V3_DYN100

上記の理由から、最初はDYN=100程度に設定し、作業を進めると良いでしょう。
最終的なオーディオファイルに書き出す時は、VOCALOID3 EDITORのマスターボリュームで最適な出力レベルになるように調整しましょう。

 

DYN値の違いによるアウトプットレベル・音質の比較

以下の動画では、比較パターンを3つ用意しましたので、参考に聴き比べてみてください。
※DAWのレベル、EQなどは同じ条件です。

①DYN=64 (デフォルト)
②DYN=100 (マスターボリューム+5dB)
③DYN=64をノーマライズして、②の音量に近づけたもの

ウェブでは少し解りづらいかもしれないですが、①のDYN64で書き出したデータは波形も小さく、少し力のない音になっています。
(ちなみにDYNの最大値は「127」なので、約半分の声の大きさ)

次に、②DYN=100でマスターボリュームを+5dBにして書き出してみましたが、レベルが大きくなっただけでなく、少し音のヌケが良くなり、高域の聴こえ方が変わっているのに気付きませんか?
出力レベルを変えるとこれだけ音の質が変わります。

さらに③ではDAW上の “ノーマライズ”(注1)を40%かけ、小さく書き出してしまった①の音源を②と同じぐらいのレベルになるようにエディットしてみました。
好き嫌いはあると思いますが、②と③はそんなに悪くないイメージです。

(注1):ノーマライズ
その音源の一番音の大きい場所を検出して、そのポイントがデジタルでクリップする寸前の最大値になるようその音源全体の音量を上げること。
つまり、そのトラックの音源を最大音量にするのがノーマライズです。
ちなみに最大値にするのがノーマライズ 100% で、ProToolsのオーディオスイート・プラグインでは 0〜100%までの数値で変換できます。

 

まとめ

このように、書き出し(アウトプット)側でやるのか、DAW(インプット)側で修正してあげるのかはその時の状況によりますが、レベルの取り方が少し違うだけで、音源のイメージが変わってしまうというのは分かっていただけたかと思います。
あとは楽曲との兼ね合いで、どこがベストなのか探ってみるとよいでしょう。

また、実際のボーカルを録音する場合も歌の音量が一番大きくなるところをピークぎりぎりに来るように録音レベルを決めましょう。

楽曲の最終的な仕上がりを最大限良くするためには、今回紹介した「録音レベル」がとても重要になる ということを理解しておいて下さい。